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17夜 くちべにの花


こんな小さい町にも花屋はあって、
それが幾件もあると不思議な感じがする。
人に花を贈る機会はそうはないと思うのに、切花が揃えてあるのはなぜだろうと、
店先の彩りを見るたびに、いつも思っていた。

父が亡くなってほんの数ヵ月後に本家の伯父が亡くなった。
伯父の葬儀には、棺に畑の春の和花がたくさん供えられて印象的だった。
本家を訪ねると仏壇にはいつも育てた花があるのに感心する。
花への思いって、特別なもの?

五月に贅沢な花見を山あいの畑でさせてもらったときに、
こころから礼を述べたら伯母が言った。
「一生懸命に丹精した花だからナイ、観に来てもらって嬉しかったヨ。
んだけども、一番喜んでいるのは、観てもらった花だヨ。」
花が喜んでいる。そんな気持ちでわたしは花を育てたことがない。

月命日にはいつも花を持って父の墓に行く。
安達太良山も吾妻山も見えるいい所に墓があるので、行くとせいせいする。
本家に倣って近頃は庭の花を持ってゆくんだが、背の高い花がなかなかない。
本家の畑には背の高い花がたくさんあったとようやっと気づいた。
墓や仏壇に供えられるよう、本家ではもともと心がけて背の高い花を育てていた。
仏さまが居るようになって初めて、わたしもそうしたことに気づいた。

もう十年も行っていないが、
昔、絵を習っていた恩師の墓参は、寺の近くを通りかかったときに寄っていた。
急に行くものだから近くに花屋もない。
もちろん線香もないから、わたしはいつも、煙草を一本かばんから取り出して、
口紅をつけて線香の代わりに置いた。
・・煙草は線香、では、口紅は花?


                         *


今夜のお写真は、庭の花々を。

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すずらん


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みやこわすれ


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オダマキ


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これもオダマキ。織物の道具に似ているので糸繰草(いとくりそう)と言うそうな。


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ワカラン。名はなんという?


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これもワカラン。


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シラン。ワカランじゃなくて、これはほんとうにシランという名。


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父も庭の花を喜ぶだろう。


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田植えを終えた田んぼ。今はこれよりもっと青々している。


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近所の友人の庭からまっすぐに見える安達太良山。ぽちっとした部分が山頂。
by noone-sei | 2011-06-14 00:10


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