こんな小さい町にも花屋はあって、 それが幾件もあると不思議な感じがする。 人に花を贈る機会はそうはないと思うのに、切花が揃えてあるのはなぜだろうと、 店先の彩りを見るたびに、いつも思っていた。 父が亡くなってほんの数ヵ月後に本家の伯父が亡くなった。 伯父の葬儀には、棺に畑の春の和花がたくさん供えられて印象的だった。 本家を訪ねると仏壇にはいつも育てた花があるのに感心する。 花への思いって、特別なもの? 五月に贅沢な花見を山あいの畑でさせてもらったときに、 こころから礼を述べたら伯母が言った。 「一生懸命に丹精した花だからナイ、観に来てもらって嬉しかったヨ。 んだけども、一番喜んでいるのは、観てもらった花だヨ。」 花が喜んでいる。そんな気持ちでわたしは花を育てたことがない。 月命日にはいつも花を持って父の墓に行く。 安達太良山も吾妻山も見えるいい所に墓があるので、行くとせいせいする。 本家に倣って近頃は庭の花を持ってゆくんだが、背の高い花がなかなかない。 本家の畑には背の高い花がたくさんあったとようやっと気づいた。 墓や仏壇に供えられるよう、本家ではもともと心がけて背の高い花を育てていた。 仏さまが居るようになって初めて、わたしもそうしたことに気づいた。 もう十年も行っていないが、 昔、絵を習っていた恩師の墓参は、寺の近くを通りかかったときに寄っていた。 急に行くものだから近くに花屋もない。 もちろん線香もないから、わたしはいつも、煙草を一本かばんから取り出して、 口紅をつけて線香の代わりに置いた。 ・・煙草は線香、では、口紅は花? * 今夜のお写真は、庭の花々を。
by noone-sei
| 2011-06-14 00:10
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