閑話休題 ふたたび


この地には足の神様がいて、二月十日には山道を登って参拝する。
昼間に大きなワラジを男衆が担いで町を練り歩き、山の神社にそれを奉納した後、
夜になってから皆が山に参る。
「暁まいり」という参拝は縁結びでもあり、一年で一番寒いこの時期の山道は
雪が積もっては日中に表面が融け、夜にふたたび凍るのでつるりんつるりんと登れない。
だから男女は手を取り合って登ることになる。
三年続けて登ったら結ばれるという言い習わしがあるというわけ。

今年は積もるほどの雪がなくてつまらない。
雪道を下りながら眺める市街の灯りはえもいわれぬ美しさなのに。
わたしはこの地に人を招くとしたら、四月の末の、花が狂ったように一斉に咲く数日間と、
二月十日の暁まいり、この二度の機会だと思っている。
けれどもいままで、うまくぴたりと招くことができたのは数えるほど、
暁まいりに連れていってやれた客人はまだいない。
だれか遊びに来ないものか。


                 *  *


ふたたびの閑話休題です。
ちかごろのことを書き綴ってみることにします。



巷で風邪が流行っているせいか、それとも父の命日に気を張ったか、
それとも新しいひととの出会いがあったからか、知恵熱を出して寝込みました。
酒が飲めなくて悲しいし、布団に寝ているとこの世のすべてから置いていかれたようで悲しくて、
休養はかえって気が塞いで悲しかった数日でした。


父の命日は、丸三年経ってようやく法事のない日になりました。
本家から女の人たちが、重箱を持って訪問してくれ、墓参ののち昼食会をしました。
重箱にはきのこごはんと、白菜漬け、酢大根、カブをヨツヅミという実で赤く染めた漬物が。
かしこまった仏事ではないので、白い野菜が多くて色がさみしいこの時期、
秋に採っておいた赤い実で白い野菜には色をつけて漬物にし、
塩で保存しておいたきのこをごはんに炊き込んで食べます。
わたしは根菜の煮物を用意して迎えました。
なんということもない、昔から食べているようなごはんを持ち寄り、
昔から、こんなふうにして女の人たちは法事がなくとも忘れず故人を偲ぶのです。


新しいひととの出会いは、わざわざ場を作ってくれた労がありました。
わたしには時々立ち寄ってお茶を飲む店があって、そこで客は皆思い思いに過ごすのですが、
店主とわたしは年が近いせいもあってすこしだけ話すこともありました。
店主はひとりの女性をわたしに紹介するために早仕舞いしてごはんの夕べを催してくれ、
ご自分も含め同じ年頃の女性三人でおしゃべりする機会を設けてくれました。

その店はいつも丁寧なごはんを心がけているカフェで、
その晩は、塩コンブとサツマ芋の炊き込みごはん、ホウレン草のゴマ和え、
たっぷりの野菜と蓮根団子と春雨のスープ、自家製卵豆腐、国産レモンのケーキ。
お店なのに、思いもよらずご馳走になってしまいました。

白熱灯の照明で心地よく、三人は「ちいさなひとつ」をそれぞれ持ち寄り話しました。
店主は高村智恵子の切り絵の図録を 紹介された女性は小さな内裏雛を
わたしは今年の年賀状の原版を。
なんということない雑談もわるくないけれども、なにかについて話すというのは大切なことで、
ひととひとの関わりにそうした縛りはいい方向に働きます。
大人になってから初めて友人になるということはたいそう難しいことで、
こんな知恵がほどのよさを保つ秘訣ではないかと思います。
そして敬語も、ね。

次回もちいさな夕べを約束していて、次は「遺言状を書こう」というお題。
ちょっと驚くかもしれないけれども、三人とも大切なことだと思っていたとわかりました。
このあたりがわたしと関わってくれる女性たちらしいでしょう?
店主に、お店の採算とはちがうところで夕べを開いてくれた、その理由を聴きました。
「楽しいことを愉しもうというところ、なにか悲しいと思うところ、
その波長が近い人たちなのではないかな、と思えたからです。」という答えでした。
どうぞゆるゆるとこのおつきあいが続きますように。



□マーマレードのケーキ

ケーキはほとんど焼いたことがありません。
ちいさな夕べへの手土産に意を決してオーブンを使いました。
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卵の白身を泡立てて。これを角が立つくらい、というの?


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アーモンドプードルというのはフランス語?
マーマレードとアーモンドのパウダーと小麦粉とベーキングパウダーと砂糖と卵の黄身。


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白身をさっくりと混ぜて。さっくりというのはこのくらい?


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型に流し入れて表面をならして。


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180℃のオーブンで約三十分焼く。なんかちょっと表面が焦げたかも、、。


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しっとりしているケーキです。もともとの夏みかんという素材がいいので、とてもいいお味。
腕前はともあれ、何度も作ってみたくなる魅力あるケーキ。魅惑のケーキと名づけよう。








ちかごろの犬たちは
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庭の雪山で遊ぶシワペロ。


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雪遊びで機嫌がいいシワペロ。


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・・・・これはなんでしょう?


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こいつが破壊して一部飲みました、ひぃー。
ペロ コ :
ちゃんとあとで出たからっ。


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シワ コ :
ふんっ。まったく油断も隙もない若造です。
セイ:
あらら、ほんとはシワ コ のほうがペロ コ よりたいへんだったよ・・・

シワ コ の飲む気満々事件
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by noone-sei | 2011-02-14 00:10 | 閑話休題(22) | Comments(14)
Commented by ひす at 2011-02-14 16:54 x
とても素敵な、山のお話とお友達のお話ですね。
ツルツルの山だから、男女互いに手に手を取って♪
同じ波長を感じたので、やはり手をとって。

どちらもろうそくの炎のように、ジンワリと暖かくて幸せになれますね。

お!
そのケーキ、メチャクチャおいしそうではないですか!
いや、絶対に美味しいよ!
だって、作者自ら「魅惑のケーキ」と命名してますもんね~。
ペロも、そういったものを壊して飲み込まないで、
素敵な魅惑のケーキを頂きなさい!


Commented by ろここ at 2011-02-14 23:45 x
こんばんは。風邪はもう大丈夫ですか?
お大事になさってくださいね。

素敵なお友達が出来て良かったですね♪
>そして敬語も、ね。
同感です。
どんなにはやく親しくなりたい人にでもまず礼節は大切だし、
親しくなることに近道は無いと思うのです、わたし。。。
少しずつ解りあってくると言葉も近づいて親しくくだけてきますよね。
(↑大人の場合ですよ)

私も遺言状は近い将来までには書いておこうと、いつもろこおと話しています。
死んだ後、埋葬や弔いをどうして欲しいかとかも。
Commented by noone-sei at 2011-02-15 01:50
ひすさん、
ひすさんもおかげんいかが?今夜は東京が大雪とか。
ひすさんちのほうは、なにしろ屋根がないから(嘘)
雪が降ったそちらのお写真を見て、ほらねー、屋根ないから。と思っていましたよ(笑)

暁まいりの参道には途中途中に裸電球が点っています。
お世話になったお店も白熱灯、暖かい色の灯りはほんとに落ち着きますね。
おっしゃるように、じんわり、、、時間もじんわりと流れてほしいものです。

「魅惑のケーキ」、えへへへ~
ひすさんの作るケーキをいつもうらやましく拝見してましたけど、
ついにわたしもケーキデビューですよ、えへんえへん。
ほめてくれてありがとうね~ chu
ペロ コ にもあんなものを飲むな、って言いたいよ、もう!
でもケーキはあげない(笑)
Commented by noone-sei at 2011-02-15 02:01
ろここちゃん、
よっぱにはほど遠いですけど、お酒が飲めるくらいには回復しましたよ~
御心配ありがとうです♪

そうなのです、お友達作りをセッティングしていただくという、
なんともありがたい経験をしたのです。
大切にはぐくむために、ハートで応えていくのには、
きちんと時間をかけるのがわたしなりの礼儀かなと思います。
>少しずつ解りあってくると言葉も近づいて・・
う~ん、ろここちゃん、すごくいい。ぴったりくる。冴え冴えとしたいい言葉。

おぉぅ、ろこ家はふたりで話していましたか。
引かないでくれて嬉しいなぁ。
わたしも大事なことだと思うのですよね。
自分自身には尊厳を、家族や周囲にはできるだけの配慮を。
ちゃんと文章にしておきたいと思ってたんですよ。
Commented by しょーじ at 2011-02-15 12:17 x
う~ん、私ならば二月十日より四月末の方が・・・(笑)
でも、体力に自信がないので、日々鍛えなきゃいけませんね。

新しい人との出会い、ですか。
これまで小説を通して出会うことがほとんどだったので、
今年は小説なしで新たな出会いを求めたいところです。

あ、わざわざ私のノォトにコメントをいただき、すみません!
Commented by ムメイ at 2011-02-15 16:04 x
新しい友達とのステキなひとときが、とても粋な楽しみ方ですね。
粋と言って良いのかな。
大人な遊び心、ゆとり、節度、全部「粋」と思うのです。

遺言はあまり若いうちには書かないものかもしれませんが
今「じゃあいつが適当?」と自問自答すると
なんだかいつ書いても良いような気がしました。
私はすごく大切な楽器があって、自分に何かがあった時には
それをまかせたい人がいます。
自分はおおざっぱに言えば若くも年寄りでもないと思いますが
もし若者のの遺言があるとすればそういうことかもしれませんね。
違うかしら(^^;)
Commented by noone-sei at 2011-02-16 01:17
しょーじさん、
あら、四月末は体力要りませんよー。
それよりも花粉症対策です。
ゴールデンウィークがあけると花粉症がきれいになくなります。
いつかおいでくださいませ♪

>小説なしで新たな出会いを・・
異業種交流ではあっても、小説という共通の土俵だと
幅に限りが生まれがちでしたか?
言葉じゃなくてハート、そういうおつきあいが生まれるといいですねーー。

ノォト、おめでとうございます♪
Commented by noone-sei at 2011-02-16 01:27
ムメイさん、
女ともだちっていいですよね?
しかも、ムメイさんがイメージされる「粋」であればなおさら。
相手の呼吸をさりげなく読んだ距離って、洗練された感じがします。
そうありたいものだし、そうあるよう、努力しなくちゃと思いますねー。

遺言って、上書きOKらしいのですって?
それなら、現状に即して気軽に準備できると思いません?
いつ書いてもいいんぢゃないかしら。
ムメイさんは楽器ですね?
わたしは飼い犬たちですよ。
昔、絵の師が亡くなった時に、数年後、最後のスケッチブックを
ご遺族からいただきましてね・・・
師は遺言を遺していなかったからご遺族の判断だったと思います。
もしかしたら、そういうものを頂く重さに変わりはないかもしれないのですけど、
もし遺言が残っていればなぁ、、、と思ったできごとでした。
Commented by ハニーJ at 2011-02-16 19:37 x
遺言って、今で言うエンディングノートでしょうか。
それならば私はすでに準備段階に入っております。
財産はないから、せめて子供のためにできることは
「荷物の整理の手間をかけさせない」ことだと思っています。
身の回りはすっきりが一番。
もう最近は物への執着が失せております。
Commented by noone-sei at 2011-02-17 01:09
ハニバニさん、
エンディングノート、調べましたよ~。
家系図、自分史など多岐に亘る項目も含まれるのですね。
http://plaza.rakuten.co.jp/gyousei/diary/201006190000/

エンディングノートの核は「自己」かもです。
現代人の自意識の高さや強さが感じられます。
対してわたしのような、地縁血縁が濃密な田舎に住んでいると、
「自己」よりも「(家)制度」が占める割合のほうが大きいので、
法的効力のある、遺言書のほうがいいのかなぁ。
うわ、もっとしっかり考えなくちゃ。

業務連絡(笑)  卵の数をまちがえました~ でも美味しかったの。にこにこ
Commented by ハクママ at 2011-02-23 01:19 x
遅ればせながら。
私はね、もう遺言書、書いちゃったよ〜〜
Commented by noone-sei at 2011-02-24 02:16
ハクママ、
おぉ、それはさすがだ。
それまでには、なにかきっかけがあるものですか?
いつかは、、、とは、ある程度思うかもしれないけど、
「いつか」が「いつ」とか「今」とかの形になるって
エネルギーの要ることだと思うのです。
それにしても、書いちゃった、というのが、すごい。
Commented by ハクママ at 2011-02-24 19:20 x
最近、相続関係に強い税理士の先生と一緒に仕事をしているの。
それで、逆算的に人生設計を考えられるようになったんです。
誕生からではなく、死から逆算して人生を考えると、
好きなことが自由にできる時間って案外短い。
でも、最後を確定しておくことで、
返って、今やるべきことが見えてくるように思います。
で、取りあえず、遺言書を書いてしまった、というわけ。
公正証書遺言じゃないから、毎年書き換えるのも簡単だし。
日記の「今年のまとめ」みたいなノリです。
Commented by noone-sei at 2011-02-27 01:45
ハクママ、遅くなりまして、、ぺこり。
そうか、そういう思考順序でしたか。
咀嚼するように何度も読み返しました。
ノリだなんて仰るけれども、腹とか胆とか、
またはフットワークの軽やかさや勇気や、
そういったイメージで読ませていただきましたよ。
ハクママ、えらかったねー。
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