99夜 一生に一度


「一生に一度は」なんて口にしたことがあるか?
よくよく文字を見ると、なんて差し迫ったような言葉だろう。
一が二度もあるなんて、業の深い。
数というものには、目にも耳にも特別な働きかけをする不思議さがある。
夢にまで見るほど思い描く夢のようで、それはなんだかうなされそうだ。


今夜は99夜。
生と死の境目が淡くなる夜には、いつも死にまつわるお話を綴ってきた。
そしてころりと転じて生の100夜へと。

「王様の千と線」はまもなく五百の夜話を迎えるから、
今夜は四百九十九話目、千の夜の折り返しにはひとつだけ足りない。

こんな夜は力を抜いてしまおう。
読んでいてくれるひとたちの話が聴きたい。
一生けんめいに聴くから、「一生に一度は」の話を軽く聞かせてくれないか。

わたしの「一生に一度は」は、薔薇の風呂だ。
薔薇の花びらが溢れるほどに浮かべられた風呂に入ったことがある。
そのときに、「これは一生に一度は、だな」と思ったのだった。

けれど「一生に一度は」を終えたからといって、死ぬわけじゃない。
再びの薔薇の風呂があったらまた入りたいと思う。

「一生に二度も三度もいつも」があったっていいんじゃないか?



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美しい花柄の本のカバー。東京駅八重洲ブックセンターのもの。
むかしからいいなぁと思うのに一度も行ったことがない。だからこれも軽く「一生に一度は」だ。
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by noone-sei | 2011-01-19 00:10


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