67夜 ときおりの休息 参  旅してきたもの 


雨を待っている。
関西の旅から戻ったこの地は、かの地での雨から一転、夏の暑さ。
この夏初めての蝉の声を聞いた。暑すぎると小さな虫はおらず、鳥も鳴かない。

家の中でいちばん涼しいのは石敷きの玄関。黒い、硯(すずり)にする平たい石。
そこで寝そべる犬のために、外に打ち水をしたり凍らせた飲料容器を傍に置いてやる。
その冷気に扇風機を当てて、クーラーの代わりだ。

旅から戻った昼に、空ではごろごろいいだすが、なかなか雨にならない。
三時を過ぎ、落ち着かなくなって呼吸が荒んできたシワ コ を外の犬舎に連れてゆく。
雷と雨が近づいたことをいち早く察するのはシワ コ 、
そしてうっかりしようものなら脱走して捕まえられないのもシワ コ 。
犬舎の周りに打ち水をし、保冷剤を周囲に置いて扇風機を当て、
ペロ コ にも犬舎に付き合わせる。じつは雷を一向に気にせぬ犬なんだけれど。

空が暗くなってきた。
山から雲が下りてくる。
鳥もざわついてきた。
今朝から空振りしていた雨も、いよいよ降るだろうか。

東風が西風に変わり、風がすこしひんやりしてきたら、空が光った。
稲光(いなびかり)と雷鳴と落雷音の時間差がなくなったとたんに、
すぐそばで落雷、ざあっと雨が来て、冷たい風が吹き込み、
・・ネット回線が不通になった。

京都は雨、甲子園は雨で試合中止、翌日の大阪はうだるような暑さ、
甲子園は雷でふたたび試合中止。
旅から戻ったこの日の雨が最後の雨、わたしは梅雨明けと旅してきたのだろう。
この雨は各地でわるさをしたのに、まったく降る気配がなくなってしまった。
ここ数日、この地で雨を待っている。

ところで、待っていたものがもうひとつ。
日頃は携帯電話を持たないが、旅の間だけ連絡のために持たされた。
これほどかと驚かれるほど使えないから、会う人ごとに、
また、鰐号に頼んではメールを打ってもらったり電話してもらったりした。
それでも片時も離さず持っていたのに、旅から戻ったら失くしていた。
大騒ぎして探し当てたら、それは夜行バスに乗ったままもう一度関西への旅をしていた。
わたしより数日遅れで旅から戻った携帯電話、おかえり。



お写真は、初夏から盛夏にかけてわが家に旅してきたものたち。



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山形から旅してきたさくらんぼ。

   茎右往左往菓子器のさくらんぼ   高浜虚子

友人から教わった句。ほんとうだ、茎が右往左往しているように見える。
携帯電話を失くして右往左往したわたしよりもずっと可愛げがある。


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その友人の関東から旅してきたカメラ。名はバンコランという。
もうひとつのレンズは南の関東から旅してきた。
不器用で、手に馴染むまでに時間がかかるので、お写真の披露はまだ先。


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九州から旅してきた美味しいものたち。ぴよぴよ。


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大阪から旅してきた美味しいものたち。感謝感謝。


関西にゆくたびに、「ときおりの休息」を書いてきた。
このたびは三度目だから「ときおりの休息 参」。
書き終えるまできっとまた時間がかかることだろう。のんびりおつきあい願いたい。
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by noone-sei | 2010-07-22 03:21 | ときおりの休息 参(12)


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