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54夜 実のなる木


東海道線にしばらく乗ると、各駅停車は海岸線を下に見ながら走る。
山の斜面には葉の茂った木が幾本もあり、
そこに大きなだいだい色の実が、まるでこぼれるように生っているのを初めて見た。
とても不思議なものを見たと思った。わたしの知る大きな実は、紅か桃色か黄色だ。
たいして高くない木にだいだいでまん丸の実がたわわ、、、たわわ、、、。信じられない。

夏みかんのジャムを頂いて、その時の木を思い出した。
あれを一個一個採って剥いて刻んで煮て、その手間を思う。
うちでもブラックベリーのジャムやユスラウメや山おとこをジャムにする。
けれど、ひとつひとつの大きさが夏みかんとは比較にならない。
・・それにしても、あの実はあの木に対して大きすぎる、やっぱり不思議だ。

ところで昨年度聴講していた大学の授業で、とてもポピュラーな心理診断法があった。
検査の方法はいたって簡単、が、診断の方法は結構込み入っている。
名を「バウムテスト」という。
白紙一枚に「一本の実のなる木をできるだけ十分にかいてください」という指示、それだけ。
小さな子どもでもたやすく取り組めるので、臨床だけでなく発達の分野でも使う。
バウムテストは投影法という一方法で、このほかに質問に答える質問紙法と並行して実施すれば
より理解の精度が高くなる。

テストだとか検査だとか聞くと、身構えてしまうけれども、
自分の現在の素直な調子を見る、成長の様子を知る、くらいの気持ちで受け止めればいい。
教授は毎年、新年に一本の木を描くのだそうで、診断方法を熟知しているからといって、
意図的に描くわけではない。書道の書き初め(かきぞめ)みたいなものなんだろう。

54夜を読んで興味が湧いたら、検索すれば、よく知られているから診断法を見つけられる。
授業では、小学生の事例をいくつか扱った。
まず自らが被験者になるので、私自身も実のなる木を描き、客観的な所見も書いた。
「かいてください」は、実際には描いてくださいなのだけれど、書くと描くでは若干印象が違う。
かといって、漢字で大きく「木」と書くのはちょっと、いやだいぶ違う。

一年間の聴講で、十種類くらいの検査を学んだ。知能テストやEQテストにはちょと青くなった。
これらはさまざまな角度から光を当て、人物を理解していく一助として使われる。
実は診断法は世界の戦争で発達してきた。
適正検査などはまさにそうで、精神のリズムには世界的に共通するものがあるのだが、
それが乱れすぎていたり乱れなさすぎていたり、明らかに逸脱している例外も見た。
こんなものでなにがわかるんだ、と半ば反発や疑いを持ちながら始まった一年だったけれども、
学問としてながめると、興味深いことがたくさんあった。
自分自身のことも客観的にながめることができて、なんだ結構大丈夫なんじゃないかと思えた。

さてそのバウムテスト。
絵画的に描く人、省略して図案化する人、さまざま自由に描いてもらっていい。
わたしの場合、実のなる木は、なんといっても林檎。
なぜだろう、一本できりりと立っている感じがするからか。


                      * *


今夜は杜の都案内、おいしいもの編を。


■牡蠣
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仙台からはちょと離れているリアス式海岸の松島、カキ小屋がある。



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仙台の牡蠣料理屋。日本で二番目に旨い牡蠣フライ。冗談です。



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牡蠣二個をひとつにまとめて一個にして揚げる。




■甘い物
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甘座(あまんざ)という名が可愛い洋菓子店。



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売茶翁(ばいさおう)という名が渋い和菓子店。



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店内はこんな感じ。



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菓子にはこんなカードが添えられている。古式ゆかしい文面。




□おまけ
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おもちゃ屋。市内をこんなバスが走っている。
by NOONE-sei | 2010-04-09 02:31 | ときおりの休息 杜の都(4)


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