48夜 にせちち


十年以上ぶりに会った男ともだちが、
同級生がやっている店に連れて行ってくれて飲んだ。
案内してくれたのはたまに行っていた店なので驚いた。
つまりその日は小さな同窓会、
店主が同級生だとは、それまで互いに気づかなかったというわけ。
「馬鹿でごめんねー。」と詫びたら酒が進んだ。

小さな店にはひとりで飲みに来た年上の女性もいて、
店の女の子に「それ、にせちち?」と聞いたのが妙に可笑しかった。
聞くほうも答えるほうも、大真面目でそれはそれで可笑しかったんだが、
胸を触ればわかるものなのか見ればわかるのか、
わたしはすっかり飲んでいたので、そこが最後までわからなかった。

したたか飲んで、今読んでいる漫画の話をしたのが記憶にある。
今わたしは五十嵐大介の作品を読んでいる。
初めは絵が受け入れ難かったことを ブルーチーズになぞらえよう。
匂いが嫌だが味は好き、だから鼻をつまんで食えるようになる練習をした。
そうまで貪欲に食いたい物か、ブルーチーズ。
いや、ヤギのチーズだってどうしても食いたい物だった。
五十嵐作品って、わたしにとってそういう漫画だ。

官能がなくはないが器官のほうが色濃い。
浮世に暮らしても浮き草じゃない。
にせちちでも、描ききったものは本当になる、そんな感じ。

男ともだちはほどのいい馬鹿な話に花を咲かせてくれ、
五十嵐大介も知ってはおり、漫画の話なぞほんの少しだったが十分楽しんだ。
でも今度また会うときには、作品を数冊、恰幅(かっぷく)のよくなった胸に押し付けてやろう。
わたしの記憶の男ともだちは今より三分の二の骨組みだったはずだ。
・・いや、ひとのことは言えない。



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食えない漫画だけど食いごたえのある作品群の中で、特に食い物にそそられるのは「リトルフォレスト」。
作家は実際に山村に生活しながら日々の暮らしを漫画にするのだが、
最後まで主人公を架空の女性で描ききったことに拍手。
主人公が大きな口で食べるのがあんまり旨そうだったので、
描かれているレシピどおりに作ってみたものもある。

もうひとつ、作ってみたい料理のこと。
スウェーデンの伝統料理『ヤンソンの誘惑(Jansson's temptation)』が、
「女の子の食卓 6」(志村志保子)に載っている。
レシピを載せようと思ったけれど、なにしろ『誘惑』だもの、
ちょっとどきどきしながら検索してみるといい。くすくす
わたしはもうアンチョビを用意した。
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by noone-sei | 2010-03-13 03:30 | 趣味の書庫話(→タグへ)


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