26夜 ときおりの休息 弐  秋は馬車に乗って


「春は馬車に乗って」は読むにきつい昔の小説だけれど、
今、この地は秋が加速している。
小説では、花が春を撒き散らしてやってくる。
わたしの家の辺(あた)りには、馬が騒ぎを撒き散らしてやってきた。

春に田植えを見たと思ったら、もう稲穂は頭(こうべ)を垂れはじめた。
道路にはカマキリがいたり、カエルが干からびていたり、イナゴが跳ねている。
そんな道を夕暮れにシワ コ ととぼとぼ歩いていたら、
向こうから馬が歩いてきた。

白と黒の大きな馬は二頭で並んで、ぱかんぱかんと蹄(ひづめ)の音はのんびりだ。
横を悠然と通り過ぎるのをわたしたちものんびりと見送った。
すると向こうから停めてくれという声と軽トラックと、車から降りたおじさんが見えた。
おじさんは革ひもを持って、どすどすとゴム長ぐつの音を立てて少し早足だ。

わたしもシワ コ も馬は大好きなので、「ぽーぽーぽー」と呼びながら追ったら、
馬は田んぼの畦(あぜ)に曲がって行ってしまった。
おじさんも馬を追ったのだけれど、軽トラックのおばさんにはもう薄暗くて行き先が見えない。
わたしが、おじさんと馬が戻ってくるよと告げると、安心して顛末を教えてくれた。

うちから二キロくらい先の、道路の向こうに馬を飼っている家があって、
馬が走るのはよく見かけたし、道路を歩くのも見たことがある。
馬は生きた乗り物。軽車両だから、自転車やリヤカーみたいなもの。
大きいから、たとえ一頭でも馬車というほうがなんだかぴったりくる。

それが、厩舎(きゅうしゃ)の柵を越えて逃げたのだそうだ。
そういえば、二頭ともはだか馬で鞍も手綱も付いていなかった。
車が速度を出して追って、馬が走って逃げ始めたら捕まえられない。
競走馬出身の馬は、二頭並ぶと競馬で走っていたことを思い出すのか、
走りたくなるというから、下手に刺激するわけにはいかない。

それで、馬が自由な散歩を満喫するまで車はゆるゆると後ろに付きながら、
ときどき降りては捕獲を試みるという繰り返しでうちのほうまでやってきたというわけ。
軽トラックには二頭は乗らないし、おじさんの引き綱で馬はまたぱかんぱかんと家に帰ったのだが、
実はパトカーや警察の大きな車両も来ていて、一見のんびりとしたこの大捕り物を見守っていた。

おばさんが、いつでも家に馬を見に来ていいと言ってくれたので、
おまわりさんに、慌てて運転して免許証を携帯するのを忘れてしまったと言ったのは
聞かなかったことにした。




今夜は旅の乗り物のお写真を。

■空の乗り物 ハッピーフライト
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やっぱり飛行機がいい。
「ウォーターボーイズ」の監督が撮った映画「ハッピーフライト」がわたしは好きなんだが、
飛行場やそのバックグラウンドが身近なものに思えてくる。


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飛行場で勤務する人々。


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映画のとおり、離陸する飛行機に手を振って見送ってくれる。


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羽というの?翼というの?
ぱたぱたと小さな羽根が出たり引っ込んだり。


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ちょうど席の下。飛行機の腹から荷物を降ろす。



■陸の乗り物
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空港バスの発着掲示板。


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これは地下の乗り物が通るところ、心斎橋駅。


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天王寺駅。
わたしたちは飛行機で東北から、友人は夜行バスで関東から、
大阪で会おうという以外、なにも決めないばらばらな旅の線をつないだ点の駅。
一年ぶりに会いたい人に会って、じんとなりながら見送ってもらった駅。


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梅田駅。
阪神線で神戸に向かうときに見た券売機。甲子園の入場券情報が貼ってある。
じじばば鰐号の夢は、甲子園で阪神対巨人戦を観ることだった。


■ぎょっとする乗り物
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おくりびと ・・って。
なんば駅。これに年寄りが何人も乗って、ほんとうにぎょっとした。
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by noone-sei | 2009-09-13 02:05 | ときおりの休息 弐(8)


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