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85夜 てなもんや三度目か。


「書を捨てよ町へ出よう」
高邁(こうまい)な精神ではない。
ずっと夜の外出を控えていたので、本当に町へ出たかったのだ。
著者・寺山修司には悪いが、酒盛りの虫がうずいていた。
町へ出たいだけだから書も捨てないし、もとより書を読むほうでもない。

飲む機会があり、一軒目はおやじ店(みせ)。
こじんまりした、小料理屋というよりは割烹。
一杯目は乾杯に生ビール。きめの細かい泡が美味くて料理も美味い、
が、ちょっとアソビが足りないか、概しておやじ店ってそんな所がある。
熱燗も冷酒も苦手なので常温で日本酒をのんだあと、二軒目のイタリア料理屋へ。
アンティパストっていうのか?わたしは前菜のとりどりが好きだ。
三軒目はごく親しい者だけになったので、王様も呼び出し居酒屋へ。
わたしはすでにへべへべだ。

その夜から三日後、財布がない。ない、ない。
三日も気づかないのもお目出度いのだが、あの夜の翌日の行動が思い出せない。
翌日わたしはなにをしていたんだ?
 今日がその夜からの三日後。
出先でやっと気づいた自分にあきれ、無免許運転だったことにもあきれる。

二軒目に最初の電話。
次は王様に電話。
三度目は三軒目に電話。

「財布をどこかに・・・はい、これこれこういう財布で・・・あぁ、ほかにですか?・・・小銭入れ・・・」
「えっ!!それ、それ、それですっ!・・・はぁ、いただきにあがる・・・実は今店の前で・・・」
「自動ドアが開(あ)かなくて」 ・・なにかのタイトルじゃない。

ドアの向こう、店内で人の気配があるのに、ドアの前で電話していた。居酒屋は出先のすぐ近くだった。
ドアのスイッチをいれてもらい、ヒラメのようにおじぎをしながら礼をいい、受け取ったら
先日絵を出品した展覧会要項の入った封筒も。 ・・え゛?
見るまでぜんぜん思い出さなかったお目出度さ。 ・・てなもんや・・。

書は捨てないけど酒を捨てよ、だ・・。
by NOONE-sei | 2005-03-18 23:36


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