14夜 献身


死んでも生きている 死んでも死んでも終わりがない世界
という文を友人のところで読んでどきりとした。

昔、好きでときどき通っていた銭湯に、どきりとするポスターが貼ってあり、
それを見るたびになんともいえない気持ちになった。
「リボンのない贈り物、献体」
相撲取りの全身が載っていた。
周囲に、献体の意思表示と手続きをしている人は幾人かおり、実際に舅をそのように見送った人もおり、
友人の医者から医学生時代の実習や都市伝説を聞いたこともあった。

以前「カテゴリ~趣味の書庫話」で少し触れたけれども、「水の時計」(初野 晴)について。
事故に遭って脳死しているはずの少女が、自分の意志で身体の一部ずつを分け与えてゆく。
ときどきしか本を読まないわたしには精神的な痛みに同調しないための抗体が不足していて、
読んだことを後悔しながら痛くてたまらなかった。
ことに、脳死でありながら生かされている身体が初潮を迎え、開かない眼から涙が流れる描写は切なかった。
昇華される読後感ではなく、いつまでも胸にくすぶった。
「水の時計」は、「幸福の王子」(オスカー・ワイルド)を底本に書かれたミステリーなのだが、
わたしには寓話に思える。そういう意味では、「みどりの指」(モーリス・ドリュオン)もおなじ匂いを持つ。

前知識なく、題名に惹かれ図書館で手に取った「密やかな結晶」(小川洋子)について。
体のどこかが欠損してゆく過程に目をやり、静かに見つめるのはこの作家の特徴だろうか。
漫画「22XX」(清水玲子)も胸が痛む読後感だった。

 (これから読む予定の人はこの先を読まないほうがいい)

一方は食欲をプログラムされたが食という行為を厭う人型ロボット。
もう一方は夫を食べた母親から生まれ、自らも母親を食べ、
いつかは自分も子どもにそのようにして能力や命を継がせることを誇らしく考える惑星の種族の少女。
食という行為は神聖で、食事の前には長く深く祈りを捧げる。
狩りで獲物を得る種族にとって肉体の欠損は命取りであるのに、
彼女は危険な目に遭って動けないロボットをロボットと知らずに自分の一部を分け与える。
けれどもロボットはどうしてもそれを食べることができず、後に食欲のプログラムを外す。
そして、なにも食さずともいられる今になって過去に食べたかったものを思うとき、
それはたったひとつ、あのとき彼女から与えられたものだった。



ところで話は変わるが、
生まれ変わることのないよう、天の人によく頼んであるので、わたしには生まれ変わる予定はないんだが、
矛盾するようだがもしもそのようなことになったなら、
わたしは看護士になりたいと思っている。





友人のところ
百夜話 22夜 神さまからの贈り物 (「密やかな結晶」のこと)
追って:
本の題名を間違えたので訂正しました。夜中に書いた夜話なので、頭に木瓜の花(ぼけのはな)が咲いていました。
 正 「水の時計」
 誤 「青の時間」



今夜は晩冬から早春にかけて読んだ活字、読むつもりの活字を積もう。
ほとんどの活字は言うまでもなく漫画。
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上から五冊目「遠藤浩輝18」というのは帯で隠れてしまった「EDEN」の最終巻。
十年以上の連載だったとか。

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このお写真は
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この地のレッドデータで準絶滅危惧種に指定されている高山植物、シラネアオイ。
盗掘などで少しずつ持っていかれて減ってしまった。
花は、身を与えようなどという意思さえ持たず、ただ咲くだけで献身なのかもしれないのに。
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by NOONE-sei | 2009-05-14 03:02 | 趣味の書庫話(→タグへ) | Comments(8)
Commented by mica at 2009-05-14 12:30 x
「 町でうわさの天狗の子」を、セイさんも
読んでいたとは〜。(嬉)
今、ワタシの1番のオススメです。
「お父さんが天狗」の姫ちゃんが、しごくフツーに
女子高生やってる日常が、たまらんです。
「恋のハムラビ法典」とか、「天狗界のパリス・ヒルトン」
とか、名言も多いし。(笑
このトシゴロの女子の、ココロの揺れだとか
イロイロな気付きだとか、そういったことも
さりげなく描かれているし。

まだ、パース狂ってたり、デッサンひどかったり
するけど、その辺は今後の精進に期待します。

蟲師は、終わっちゃいましたね。残念。
冬目景の、このシリーズは未読です。読んでみたーい。
ハガレンは、レンタル店で借りてるのだ
まだ最新刊が借りられないですヨ。。。
Commented by しょーじ at 2009-05-14 12:40 x
「献身」に何か非人間的なイメージを抱いてしまう私は、
よっぽど低俗な人間なのでしょうか・・・(苦笑)

ところで、手塚治虫の「ブラックジャック」も、そういった題材を
扱ってたように思いますが、あの作品は切なさや痛みそのものには
焦点をあててないので面白く読んだ覚えがあります。

う~ん・・・痛い物語は苦手です~(苦笑)
Commented by NOONE-sei at 2009-05-15 01:02
micaさん、 晩冬、使ってみたよー。
はい読んでましたー。夏目友人帳も読んでおりまするよ♪
>しごくフツーに女子高生やってる日常が、たまらんです。
そうそう。ほんとは全然非日常な設定なのにね。ありえんでしょ、天狗。ぷぷ
micaさんはもう読んでるかもですけど、岩本ナオはほかの作品もいいですよねー。

冬目景の「幻影博覧会」はちゃんとしてるかもです。
上手すぎるというか老練なのが邪魔になるのかな、
たいてい、終盤になるとムード倒れで失速するので今度こそはと願ってます。
かたやハガレン!上手い、若い、スピード感、グルーヴ感、いい漫画ぢゃ~~。
はよ読みなはれ~~。
Commented by NOONE-sei at 2009-05-15 01:23
しょーじさん、
>「献身」に何か非人間的なイメージ
ん?それは臓器提供のことでしょうか?
人間を自然界の一部としてとらえると自然に反しているのではという意味かな?
ここで書いたのはもっとこうウェットな心理面を書き表すのに
身体の一部を消失あるいは与える、というテーマの作品を借りて語ってみたわけでして。
現実世界の制度とは離れたところのお話です。
だから日頃持っているイメージから離れて読んでね♪

手塚治虫は「どろろ」と「ワンダー3」が好きなのですけどねー、
「ブラックジャック」はピノコの誕生は怖かったーー。
Commented by ひす at 2009-05-15 14:06 x
「幸福の王子」のいったいどこが「幸福」なんだ?!

保育園の頃初めて読んでから、ずっとそう感じておりました。
でも最近は、そのすべてではないけれども、
一部分まで、というか、ある範囲までのそういう行為なら、
「なるほど、そういう幸福も確かにあるな。」と感じるにいたりました。

こんにちは!
昨日今日こちらは少々寒いですが、そちらはいかが?

お昼ごはん代わりのリンゴをかじると、そちらのリンゴの木が浮かびます。
そうそう、いつも果実をかじるときに思うのですが、
「果実をほかの動物に食べられる木々ってどういう気持ちだろう?」
種をばら撒くのを期待しているのか、
それとも、単純に実らすことのみに意味があるのか。
不思議だなあと感じるのは、食べる側の動物だから?

セイさんは生まれ変わる予定がないそうなので、
いつかリンゴの木に話を聞いておいてください。
ちなみに私もそういう予定はないので、
生まれ変わらず上の方でいつまでもまた美味しいものでも食べに行ってましょう!



Commented by ろここ at 2009-05-15 15:18 x
こんにちは〜。

>身体の一部を消失あるいは与える
↑そういえばアンパンマンもそうですね。でもこのお話がミョーに明るいのは
欠損したアンパンの顔はまた新しいものを作ってもらって
いわゆるリセット出来るというところにあると思うのですが
これって「今ふう」だなあ・・と思うですよ、私。
「密やかな結晶」は読んでないのですが、映画「薬指の標本」を観た時に
この作家にセイちゃんと同じような印象を受けました。

「女の子の食卓」は以前も話題に上っていましたね。
面白そうだなぁ〜と思いつつなかなか本屋で見かけないので
今度ネットで買います。
Commented by NOONE-sei at 2009-05-16 00:43
ひすさん、
あらら、なんておませな保育園児だったんでしょ。
ちびっちいくせに反骨のがきんちょでしたね?あっはっは

幼児などに日本の未来を尋ねると真面目にまっとうに正しい答えを言うでしょう?
正義と常識にあふれている、といつも感じます。
だから、ひすさんが「幸福の王子」の『幸福』に疑問やもしかすると反感を
感じたのはまっとうだと思います。
わたしも今でもあのねじれた幸福を幸福と認めたくない。
自己満足とは言いたくないけど、あの王子の献身はあってはならないと思う。
そしてツバメの献身をこそいたましいと思う。
今でも怒りに近い感情が湧くですよ、ほんとは。

りんごはねー。
今日の散歩でりんごの小道を歩きましたよ。
小さな実がたくさんなっていました。いろいろ聞いたんですけど、
りんごは無口でしたねー (ほんとかなー?)
Commented by NOONE-sei at 2009-05-16 01:05
ろここちゃん、
勝手にリンクしちゃったよ、ごめんね。どきりと響いたものですから・・

アンパンマン!そうだったそうだった!リセット!そのとおりだ。
なにしろ子どもの味方には ♪みんなの夢守るため~~ という使命がありますから、
与えても失っても明るいですよね。
いいのかなぁ、あんなふうに永遠に死ななくて、勧善懲悪だけで。
あの、食べられちゃった顔さえなければなぁ、と思っていました。
テーマ曲は、無人島にもって行きたい唯一無二の一曲の一位だったそうですよ。
それにしても、あの、食われちゃった顔がなぁ・・・ ぶつぶつ

女の子の食卓、いいですよ。それから小玉ユキの初期短編集も。(ってこれ、前にも書いた)
ろここちゃんもまたそっちでいろいろ活字を積んで見せてねーー。たのしみぢゃ。
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