99夜 晴と褻


今夜は四度目の99夜。
99夜はいつも、死のお話をしてきた。

「晴(はれ)と褻(け)」ということばがある。
たとえば、婚儀や出産が晴れなら、日常や忌みごとは褻だというような。
「王様の千と線」は、99夜に死を 100夜に目出度さを 
褻の場が晴の場にくるりと転じて100夜を迎えるような仕掛けで綴ってきた。
いつもわたしの脳の中にあるのは、生ってなに、死ってなに。
その、背中あわせなのにちっともわからないものを 百ものお話のちからを借りて見つめてきた。

さて、なにを語ろう。
この新々々百夜話は、父の死に臨んでずっと死について書いてきたので、99夜に語るお話がない。
語れないから、歌うことにする。


     松の木の 雪や はや消ゆ 軒の褄   (作 未詳)

   
父がこよなく愛するものだから、毎冬の雪払いに難儀した門かぶりの松、
この冬は一度しか雪払いをしていない。
春が近づくと花のようにぼたぼたと降る雪の中、幾度も脚立を出しては雪払いをしたものだったが。
父があんまり愛でるので、「カドマツ」と、ヤクザの三下か舎弟のような名を付けて、
わたしはひそかに疎んじていたけれども、松もさみしそうだ。
難儀したら憎らしくて、雪がないとさみしく見えるなんて、ひとの目などいいかげんなものだ。
悪口も言えなくてはつまらない。もう一度くらい、春の雪が巡ってこないかな。

・・上の俳句は、さして魅力的でもない句だと思うだろう?謎解きをしてあげる。
はじまりからもおしまいからも巡る文、回文。


     まつのきのゆきやはやきゆのきのつま


ほぉら、すこしは春の気配?



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もうじき父の命日が巡ってくる。
一周忌に人寄せをして喪服で法要を営むのはもう嫌なので、
ゆかりのある職人さんや、父が世話役をしていた神社の神主や仲間に参集願って会食をすることにした。
儀式よりも、懐かしいお話が聞きたい。お話が生まれる場所を営みたい。
晴でも褻でもなく。


※これまでの99夜は
死の顔 2005,04
死の発見 2006,01 
お迎えが来る 2007,02
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by NOONE-sei | 2009-01-13 03:18 | 新々々百夜話 父のお話(12) | Comments(6)
Commented by しょーじ at 2009-01-13 12:32 x
たしか日常生活で「ケ」が枯れていく(=「ケガレ」)ので、
非日常の「ハレ」でリセットするんでしたかね。
民俗学は面白いですが、わたくし、歌の方はさっぱりで・・・(苦笑)
「冬来たりなば春遠からじ」は歌ではなくて諺でしたっけ?
Commented by NOONE-sei at 2009-01-13 23:31
しょーじさん、
はいはい、調べましたよ。
でもねー、ケが枯れたら、つるっぱ頭になるんであって、
ケガレぢゃないんじゃないかなぁ、、、と思ってしまいました。
・・ケガレって嫌な言葉五本の指に入れてもいいくらい嫌いです、わたし。
女性だというだけで、古典的なしきたりではずいぶんな扱いを受けるでしょ、だから。

はいはい、歌か諺か調べましたよ。
英国浪漫派詩人シェリー「西風に寄せる頌歌」の結びの句なんだそうですねー。
で、結局、よく知られて定着して慣用句みたいになっているのでしょうかね?
「明けない夜はない」みたいなもの?

百ずつの縛りでお話を書く、次が最後の夜話です。
文章を書きつづける上で、中だるみや息切れをコントロールしながら、
ようやくの百だぁぁぁ。 (←ちょと叫んでみました)
Commented by しょーじ at 2009-01-14 14:24 x
お手数をおかけしました。調べていただき、ありがとうございます。
ははぁ、英国詩人でしたか。何となく中国古典系かと思ってました。
「明けない夜はない」はシェークスピアでしたかね。
いやいや、これは自分で調べておきますよ(笑)

おめでとうございます、と言いかけて、100話(実際には400話)まで
あと1話あるのに気づく。叫ぶのは次回に。
いつも読むのを楽しみにさせていただいておりますので、
さらなる100話を期待しております。
Commented by ひす at 2009-01-14 14:36 x
草にこそ 名は咲くかどの 桜の木

気の楽さ のどか草花 そこに咲く

私はこういう歌2首(1首?)でお返しを♪

縁ある方々あいよって、そこで思い出話など…
それが一番見のある会合でしょうね。

先ほど散歩に出かけたら、
木蓮の蕾が日の光で銀色に輝いてました!
もう!春の予感なのか!
嬉しくてつい立ち止まり、携帯で撮影しておりました。
Commented by NOONE-sei at 2009-01-17 11:25
しょーじさん、
お返事が遅くなってごめんなさい。ぺこり
マクベスを調べたらね、「明けない夜~」の訳についての
おもしろい記述を発見しました。 ↓
http://paradise.269g.net/article/2440392.html
明けない夜って、・・そうだったのかー。

楽しみに読んでいただいているですか、嬉しいなぁ・・


Commented by NOONE-sei at 2009-01-17 12:00
ひすさん、
お返事が遅くなってごめんなさい、ふかぶか。
うーーん、なんだろうこれは??と思って、調べたらわかりましたよ!!
双文とか倒言とか、なかには「たいこめ」と言われる、
たいそう技術の高い回文のバリエーションですね?すごいー。
調べるまで、ふたつの俳句が対だとは気づかなかったよ、ヤラレター
それにしても「鯛釣り舟で米・・」って・・ もう。 昔の人ったら。

おとといの道路はつるぴかーーー。
青空に、昼でも路面凍結でした、でも犬とお散歩したよ♪
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